令和5年1月4日、住宅金融支援機構はフラット35の金利の引上げを発表しました。
これは昨年末に日銀が金利引上げを0.25%から0.5%に容認する考えを示したことによります。
前回の引上げは令和3年3月、1年9カ月ぶりの金融政策の転換です。
この発表に市場はすぐに反応、円為替は対ドルで一時129円台を記録、急速な円高が進みました。
その後は、円相場は133円台まで円安に戻りつつあります。
一方、株式市場は円高により企業実績の低下を嫌い、今年の取引開始は大幅値下げからスタートしました。
1月5日には住宅ローンの固定金利に影響を与える「長期国債」の金利を0.5%まで引上げを発表、これにより発行した国債の金利負担が増加するため、国の財政への影響を心配する声が上がっています。
このような金利引上げの環境の中、現在、住宅購入を検討中の方々は返済計画が安定している全期間固定金利を希望する方は全体の1/3程度ですが、実際の契約時には金利の低さから変動金利に考えを変えていることを以前のブログで説明しました。
現在、住宅取得をフラット35を用いての購入を検討されている方に向けた情報になります。
フラット35はどの程度利用されているか?
住宅ローンには全期間固定金利、固定期間選択金利、変動金利の3つのタイプがあります。
全期間固定金利タイプは、フラット35に代表される住宅金融支援機構が国策の一環として運営する商品と、民間金融機関が提供する商品に大きく分かれます。
では、これらの金利やイプは昨年2022年4月時点でどの程度の利用割合だったのでしょうか。

全期間固定金利を利用した方は、全体の8.9%、その中でフラット35を利用された方は5.7%と言う調査結果があります。
住宅ローン利用者の5人に1人強の方が利用されていることになります。
思ったより少ないと感じる方もいると思います。
フラット35は購入物件の広さも審査をする
フラット35は国の住宅供給政策の中で運用されているため、住宅の広さが審査の対象になっていることが大きな特徴です。
*小さな家が増えることを一定程度抑える目的。
戸建て70㎡以上、マンション30㎡以上が融資条件です。
国土交通省の「住生活基本計画における居住面積水準」によれば、一人暮らしに最低限必要な居住面積は25㎡、ゆとりのある居住面積は40㎡とされています。
1Kタイプの一人住まい向けのマンションには適さないローン商品であることがわかります。
言い換えればほとんどの2LDK以上のファミリータイプは融資の対象であると言うことです。
フラット35の借入額と融資率
フラット35には年収を制限する審査はありませんが融資額と融資率に一定の制限を設けています。
審査項目 | 制限 |
融資額 | 100万円~8,000万円 |
融資率 | 80%以下(ただし、これ以上でも金利設定を高くすることで可能) |
購入価格の80%を上限とすることで通常金利による借入が可能と言うことです。
融資率の上限が80%ととは自己資金を20%は用意することと言い換えることができます。
2022年4月の調査では全期間固定金利タイプで契約された方の47.3%がフラット35の通常金利で契約可能な融資率ですが、それ以外の方はフラット35を利用すると高い金利の融資になります。(グラフには民間の全期間固定契約者36.1%が含まれる)

頭金を20%以上用意できなかった方が全体の52.6%です。
この金額には物件取得に必要な諸経費は含まれていません。
フラット35の返済負担率
フラット35は融資率以外に返済負担率を貸出基準にしています。
年収400万円以上で35%以下、年収400万円以下で30%以下が基準になります。
*返済負担率は、年収に対して返済金(住宅ローン以外も含む)が占める割合です。
返済負担率=年間の支払額(住宅ローン以外も含む)/年収
例えば年収400万円に方は最大35%、年間で140万円まで返済に充てることができる計算になります。
これは月支払額116,667円になります。
年収から借入額を算出
フラット35の融資基準から借入れが可能な額(支払利息も含め)を年収別に算出すると次のようになります。
年収(万円) | 返済負担率(35%) 換算による年支払額(万円) | 35年ローン 総支払金額(万円) |
400 | 140 | 4900 |
450 | 158 | 5513 |
500 | 175 | 6125 |
550 | 193 | 6738 |
600 | 210 | 7350 |
650 | 228 | 7963 |
700 | 245 | 8575 |
750 | 263 | 9188 |
800 | 280 | 9800 |
850 | 298 | 10413 |
900 | 315 | 11025 |
950 | 333 | 11638 |
1000 | 350 | 12250 |
物件購入者の年収割合(全期間固定金利)は、400~800万円が全体の58%を超えています。

年収が600万円あれば、支払利息を含めて6,000万円前後の物件の購入は可能と言えます。
フラット35は多くの方に利用できる住宅ローン商品であることがわかります。
返済負担率はリスク
一般的に住宅ローンが破綻しない安全な資金計画のひとつの目安として返済負担率が20%以下と言われます。
各年収から算出される融資額の最大値の関係は次のようになります。

如何でしょうか。
年収600万円を見るとフラット35制度上は融資最大額は6000万円ですが、返済負担率が安全と言われる20%以下にすると融資額は4000万円強であることがわかります。
借りれる額と返せる額を考えた場合、大きな差があります。
返済負担率はローンを完済するまでのリスクの大きさと比例するとすれば、返済負担率が高い方はローンを組むことはできますが、将来への返済に不安が大きいと言えます。
フラット35はお勧めできるか?
フラット35は全期間固定金利タイプの住宅ローン商品です。
住宅金融支援機構が全国の金融機関を通して発売している商品です。
商品も複数用意され、利用者にとってはメリットが大きな商品です。
特に現在の固定金利は昨年末の金利の引上げに伴い固定金利も引上げされました。
今後もこの流れは続くと見られています。
このような金融政策の流れの中でフラット35の魅力は「全期間を一定の金利で利用することができる」ことでしょう。
固定金利が引上げの基調にあるとすれば、現在、住宅購入を検討している方で固定金利タイプを利用したい人であれば出来るだけ早く購入の決断をすべき時期にあると言えます。
ただし、返済負担率には十分に気を付けることが必要です。
安全と言われる20%は机上の計算だけではなく、これまでの経験から導かれています。
「今は元気だし、将来も見込みがあるから30%でも大丈夫」と考える場合は、将来金利が固定されていても様々な外的要因(例えコロナ、不景気など)により家計の安定は一瞬で乱れる可能性を十分に頭に入れた上で購入されることをお勧めします。
20%だから絶対安全、30%だから絶対危険とは言い切れませんが、20%から大きくかけ離れることは何かあった際のリスクが大きくなることだけは確かです。
FJマンション管理士事務所では、マンション売買に関する様々な疑問や不安について、マンションの専門家(マンション管理士)、宅建士、ファイナンシャルプランナーがお答えしています。
お気軽にお問合せ下さい。
