皆さんは住宅ローンを契約した時に「適用金利」の提示をされたと思います。
店頭金利から優遇金利を差引いた金利です。
多くの方はカタログ通りの優遇を受け、適用金利で契約をします。
しかし、一部の方は優遇金利以上の割り引きを提示されます。
逆に、優遇金利の適用が100%受けられず、高い金利を提示される方もいます。
また、融資はできませんと断られる方もいます。
このような差はなぜ、起きるのでしょうか。
銀行は利息で収益を出している
皆さんもご存じ通り、金融機関はお金を貸してその利息で利益を上げます。
ただし、お金を貸す時は相手の信用を考えます。
皆さんだってお金を貸す時は人と金額で判断しますよね。
「あっ小銭がない、ちょっとジュース代貸して」
「生活が苦しくて10万円かして」
前者であれば最悪、返ってこなくても御馳走したと思えば良いでしょうが、後者はすぐに「良いよ」とはなかなか行きませんよね。
銀行が貸出す住宅ローンは金額が数千万円単位のお金になります。
審査が慎重になるのは当然です。
金融機関は何を重要視してるの?
これについては令和3年に国土交通省住宅課が統計を発表しています。

ローンの実態に関する調査結果報告書(再編集)
具体的に項目を見ましょう。
90%以上が考慮すると挙げた項目に注目します。

ローンの実態に関する調査結果報告書(再編集)
いずれの項目も多くの金融機関が審査項目としています。
借りる年齢、返す年齢、健康状態は当然として、担保評価、年収など当然ともいえる項目ですが、年毎の推移を見ると審査項目の重要度に変化が起きていることも読み取れます。
明らかに減少傾向を示す項目に「担保評価」「年収」「勤続年数」が該当します。
融資の審査で重要度が下がったと考えることができます。
これに対して上昇傾向を示す項目に「返済負担率」「営業エリア」が該当します。
特に返済負担率を重要視する傾向はここ数年で急激に増加していることがわかります。
面白いことは「年収」も重要と考えられていますが、併せて返済負担率(年収に対する返済額)が重要になっていることがはっきりとわかります。
年収が1億円あっても返済負担率が30%、40%ではリスクが高いと判断する金融機関が多くなっていると言うことでしょう。
営業エリアについては銀行は支店数を減らしています。
また、ネット銀行が台頭したことで地域に寄添った営業が出来にくい環境にあります。
その点で地域性を重要視する金融機関が多くなっていると考えています。
令和2年から増加傾向になった項目
融資率を審査項目に入れた金融機関も増加していることがわかります。
融資率は1億円の物件を買うために融資する金額です。
例えば7000万円の融資が必要であれば融資率は70%です。
言い換えると頭金がどの程度準備されているかを確認することができます。
年収以外で返済負担率、融資率を気にする金融機関が増えていると言うことは、長い返済期間に家計の負担にどの程度の安全性(リスク)があるかを確認していると言うことです。
住宅ローン以外の負債や返済履歴(ブラック)が減っている点については、返済負担率は住宅ローン以外の返済も含まれるため、返済負担率を確認すれば他の負債も考慮することができるためと考えられます。

ローンの実態に関する調査結果報告書(再編集)
金融機関は総合的にリスクを判断している
金融機関が審査段階で考慮する項目は各年度で変化します。
貸出す人の審査は慎重です。
金融機関は個々の貸出先にリスクを算出します。
返済が滞り、最悪破綻する可能性を数値化すると考えれば良いでしょう。
リスクが高かれば、貸出す時の金利を上げ、儲けを増やします。
リスクが貸出に見合わないほど高ければ融資を断ります。
リスクが低ければ優遇して確実な利益を確保します。
金融機関としては当然のことです。
言い換えれば、貸出時に示される適用金利は貴方へのリスク評価と言えます。

イメージ図を示しましたが、優遇金利は金融機関が貸す人へのリスクによって変えることができます。
一定の基準をリスクが下回れば、優良顧客として更なる優遇金利を提供しますが、逆に一定基準以上の高いリスクの人には金利を引き上げて貸し出します。
リスクが一定を超えると貸出しお断りとなるイメージを示しています。
しかし、厄介なことがあります。
リスクの基準が各金融機関の営業方針と深く関わることです。
金融機関の営業方針
住宅向け融資を増やしたいと考えれば、多少リスクがあっても貸し出します。
その基準が会社の営業方針で左右(イメージ図)でズレたり、広がったり縮まったりします。
そのため、借りやすい銀行と借りにくい銀行が出てしまいます。
仕方のないことですが、借入を申込む側としては厄介です。
借りる側としては、断られても、高い金利を提示されても「この金融機関の営業方針と合わなかっただけ」と割切るしかありません。
適用金利を提示された時
適用金利は契約日の店頭金利によって変動します。
融資の結果が出たら、出来るだけ早く契約まで進めることをお薦めしますが、店頭金利の変動以外の要因で期待した金利の提示が得られなかった時は借入先を変更することも考えても良いでしょう。
皆さんはお客様です。
希望した内容でないなら持ち帰り、他と比較できる立場であることを忘れないでください。
金融機関によってリスク基準は異なります。
適用金利は金融機関が貴方を総合的に判断したリスク度によって決めた金利であることを忘れないでください。
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